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追悼:小林桂樹

 投稿者:mokki  投稿日:2010年 9月22日(水)09時34分21秒
  通報 編集済
   俳優・小林桂樹氏逝去の報に接し、代表作といわれる『裸の大将』や森繁の『社長シリーズ』も楽しませてもらいましたが、なんと言っても次の三つは個人的に忘れられない作品でした。

 その一つは黒澤明の名作『椿三十郎』です。この中で彼は敵方の一員、三十郎側につかまって猿ぐつわをかまされ押入れに押し込まれる男です。
 部屋では若者たちと三十郎が作戦会議をしている。それを押入れの中で聞きながら、作戦の重大な欠陥に気づき、敵方なのにそれを教えると、またおとなしく押入れに入っていく。押入れの中で聞いていて、どうやら悪いのは自分の上司たちと気づいたのでした。
 このひょうひょうとしてとぼけた真面目な演技が、何度見ても面白く、見どころの多いこの映画の中でも、とりわけ楽しみなシーンとなっています。

 第二は、池波正太郎氏の原案によるテレビシリーズ『仕掛人 藤枝梅安』です。小林桂樹といえば、上記もそうですが温厚篤実、穏やかな性格の真面目人間というイメージが強かったのですが、この殺人を業とする鍼師は、ふだんの彼のイメージとの落差が大きいだけに凄みがありました。

 そして最後に、これこそ一押しの彼の遺作と言ってもいいほどの名演が、大林宣彦監督の『あの、夏の日 ~とんでろじいちゃん~』のじいちゃん役だと私は思います。
 あまり現実にありえない亡霊ものや、タイムスリップものは好きでない私なのですが、この夢とも現実ともわからない、じいちゃんの死の間際の幻想にもとづくリアルな話、少年のころの思い出と今の孫とのやりとりが入り混じり、まこと微笑ましく、ときにシリアスに迫って、これも何度見ても飽きないわが人生の財産の一つと言っても大げさでない映画になりました。

 その中で効果的に使われているのが、BGMに採用した「ジョスランの子守唄」なのです。病気で屋敷の離れに隔離されている美少女、その子に憧れる少年、じつはじいちゃんの子ども時代のこと。この美少女を演じたのが、大河ドラマ『篤姫』で名演技を評価された宮崎あおいの10歳時代でした。

 この少女が、いつも離れで「ジョスランの子守唄」を聞いていて、少年にも聞かせてくれる。そして死ぬ間際に、草原で二人きりになり、少女は少年の前に立って静かに着物を脱いでいくのです。

 そんなことを思いながら、ぜひBGM「ジョスランの子守唄」をお聞きいただきたいと思います。このCDは他のすばらしい子守唄もたくさんで、由紀さおりとのすばらしいハーモニーも聞けるお得な一枚だと思います。

 ただ安田祥子の歌う歌詞の最初、「むごきさだめ身にあふりて」となっているのは、「天降りて」(あもりて)のほうが正しいのではないかと思います。もう一つ、二番の中ごろ「祈りに泣きし」と歌っていますが、これも「泣きぬ」ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
 
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